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Isabeau de Bavière la reine calomniée

2023/01/27

参考文献

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参考文献の紹介です。
イザボー・ド・バヴィエール 非難された王妃
Isabeau de Bavière
la reine calomniée
筆者:Marie-Véronique Clin
出版社:Perrin
出版年:1999 言語:フランス語
ISBN-13:9782262008598
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フランス語のペーパーバック。タイトルは『イザボー・ド・バヴィエール 非難された王妃』といったところでしょうか。フランス史家の重鎮レジーヌ・ペルヌー女史に前書きを書いてもらっており、いわばお墨付きの伝記です。

1999年、パリのPerrin社より出版。Perrin社は歴史関係の専門書を多く出している出版社です。
裏表紙の著者紹介によれば、著者マリー ヴェロニク・クラン女史は、出版当時、パリ医学史博物館の管理人を務めていた人物とのこと。歴史家を養成する仕事でレジーヌ・ペルヌー女史と長年一緒に働き、ペルヌー女史の代表作『ジャンヌ・ダルク』(この本は邦訳あり。Amazon→『ジャンヌ・ダルク』レジーヌ・ペルヌー)では共著に名前を連ねています。その縁で、ペルヌー女史に本書の「はじめに」(前書き)を書いてもらったとのことです。

内容は、イザボー登場の前史から亡くなるまでの、非常にオーソドックスな伝記になっています。執筆にあたって読み込んだ参考文献もたくさん。フロワサールの年代記をはじめとした一次史料から、マルセル・ティボー先生の先行研究やヤン・グランドー先生の論文などまで、しっかり列挙されています。
本文中ではときどき、出典元から引っ張り出したラテン語や中世フランス語をそのまま載せて、翻訳を併記してくれていないのは不親切設計ですが、一般のフランス人は読めるんですかね。

特徴としては、まず第一にイザボーの名誉回復を目的としていること。従って、ともかくイザボーへの評価がすごく高いです。
イザボーが後世めちゃくちゃに言われていることのほとんどがデマであり誹謗中傷だとしても、本人にも至らない点が無かったわけでもないと思うのだけれど、本書では厳しいことは一切書かれていません。褒めて、賞賛して、同情して、とことん寄り添う姿勢を貫きます。

しかも、ときどき熱量がすごい。イザボーが子供たちを育児放棄し、飢えと貧困の中に放置していたという伝説に対する反論がこちら。

Pourquoi Jean de Denze achète-t-il un《greil》pour cuire les pommes de Mgr de Guyenne et des enfants de France, s'il n'ont pas de quoi manger?
Pourquoi acheter deux paires de housse pour porter le pain de la boulangerie jusqu'à l'hôtel de la reine et de Mgr de Guyenne? Pourquoi acheter à Robert Le Cine, premier panetier de la reine, une paire de 《fer à gaufres》pour les desserts du duc de Guyenne? Pourquoi acheter un coffre pour mettre les gâteaux? Comment a-t-on acheté tant de Vaissele pour des enfants affamés?

なぜJean de Denzeが、リンゴを焼く『グリル』をギュイエンヌ殿下(王太子)とフランス王家の子どもたちのために買うのでしょう。食べるためじゃないの?なぜ、パンを王妃とギュイエンヌ殿下の館まで運ぶために2組の《覆い》を買うの?なぜ、王妃の筆頭パン焼き職人Robert Le Cineに、ギュイエンヌ公のデザートのための1組の《ゴーフルの鉄》が買われたの?なぜ、焼き菓子を入れておくための入れ物が買われたの?どうして飢えている子供たちのためにあんなにたくさんの食器類を買うというのでしょうか?

出典:Isabeau de Bavière, la reine calomniée(P.148)
イザボーへの理不尽な中傷に対しての、「そうじゃないのよ!」という叫びが伝わってくるような、怒涛の5連続クエスチョン。

もはや擁護が当たり前のようになっているマリー・アントワネットとは違って、まだまだイザボーへの風当たりは悪いですから、イザボーの研究者は孤軍奮闘です。イザボーが口撃されているのを見ると、「自分が擁護してあげなくちゃ」という気持ちにさせられてしまうのかもしれません。

歴史学を専攻していた本ブログ管理人。大学1回生のとき、フランス語を履修し、おそらく購入が推奨されていたためと思いますが、フランス語版の電子辞書を買ったのでした。しかし学習にはあまり身が入らず、履修が終わると辞書はタンスの肥やしになりかけておりました。

ところが2回生のとき、ネットで見た宣伝文句に惹かれてこの伝記を取り寄せ、これが自分にとって初めてのフランス語の本になりました。辞書があるからなんとか読めるだろう、と思っていたのでしょう。

案の定、一言一句、何一つ分からないので、放課後に自習スペースにこの本と電子辞書を持ち込んで読んでいた、というよりは解析していました。電子辞書が多いに役立ちました。それで、少しばかりではありますが、フランス語が読めるようになりました。
時代は、2010年代に入るか入らないかくらいの頃。スマホも、スマホによる自動読み取り&翻訳機能も発展途上な時代だったので、それらを使えなかったのが地道な勉強に繋がって良かったのかもしれません。

それにしても、他の本もいろいろ入手した今になって思うのは、このクラン女史の伝記は、一般読者向けにわりとやさしめの文章で書かれているのだろう、ということです。翻訳機を使っても分かりにくい学術論文や専門書の文体と較べると。
ということで、最初に出会ったイザボーの伝記が本書だったのは幸運だったと思います。

なお、本書のトレードマークともいえる表紙の白塗りの女性は、イザボーを描いたものです。ただ、イザボーの死から50年ほど後の画風とファッションなので、後世の人が想像で描いたものではあると思われますが、なかなかインパクトのある表紙です。

以上、マリー ヴェロニク・クラン女史による伝記“Isabeau de Bavière la reine calomniée(イザボー・ド・バヴィエール 非難された王妃)”でした。

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中世末期の西ヨーロッパ史、特に王家の人々に関心があります。このブログでは、昔から興味のあったフランス王妃イザボー・ド・バヴィエールについてを中心に発信します。

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